「バカラ」最高級クリスタルブランドの基本と代表作をおさらい!

ブランド食器 2023.12.28

バカラ

宝石と見まがう繊細なカッティングと、吸い込まれそうな透明感―、クリスタルガラスは人間の手が作り出した最も美しいもののひとつといえるでしょう。
今回は、フランスが世界に誇る至高の輝き「バカラ(Baccarat)」について、その基本と代表作、そして日本との浅からぬ関係を交えて、ご紹介していきます。

今さら聞けないバカラの基本

どんなブランド?

「バカラ(Baccarat)」はフランスのクリスタルガラス製造ブランドです。創立からまもなく260年になる2023年現在も、世界屈指のラグジュアリーメゾンとして君臨しています。
タンブラーやワイングラスなどのテーブルウェアだけでなく、花瓶、オーナメント、シャンデリア、ビジュウ(ジュエリー、アクセサリー)など、様々な製品が展開されています。
ワインやウイスキーの色が美しく映えるバカラのグラスは、お酒好きな方にとっても憧れの存在ではないでしょうか。

バカラ創設は1764年までさかのぼります。
他国に遅れをとっていたガラス製造を発展させるため、フランス王ルイ15世の認可を受けて、フランス東部ロレーヌ地方のバカラ村でガラス製品の製造が始まりました。
工場買収、倒産、改名など多くの危機に陥りますが、その優れた作品は1855年、1867年、1878年のパリ万博において3度のグランプリを受賞します。
それ以降も他国にも引けを取らない独自の作品世界を展開し、フランス王室御用達ブランドとなってその名声を確実なものにしていきます。
専門の職人たちによる徹底した品質管理と独創性によって生み出される製品は、ナポレオンを虜にし、ルイ・フィリップ王の正餐を彩り、ローマ教皇の別荘でも使用されてきました。
現在も、世界中にファンを持ち、セレブリティや王族皇族に愛用されています。

代表的な作品は?

「アルクール」タンブラー

バカラ アルクール タンブラーバカラといえばアルクールのタンブラーを思い浮かべる方も多いでしょう。1841年に誕生し、パリ万博で2度のグランプリを受賞しました。アルクールシリーズはタンブラーにとどまらず、花瓶、キャンドルスタンド、ビジュウコレクションなどが展開されており、大変人気があります。バカラの不動の定番として、日本でも多くのファンに愛用されています。

「マッセナ」ワイングラス

バカラ マッセナ ワイングラス1980年に作られ、今も愛されるベストセラー・デザイン。豊かな丸みを帯びたボウルに、流れるようなカットが施されています。ステムからフットに向かって広がるプリーツが、グラマラスな輝きを演出します。モダンで華やかなきらめきがワインをよりゴージャスなものにしてくれそうです。マッセナとは、ナポレオン1世に「勝利の女神の申し子」と称えられたフランス陸軍元帥の名からとった名称です。

「ローハン」シャンパンフルート

バカラ ローハン シャンパンフルート1855年のパリ万博で名誉大賞を受賞したデザイン。エッチングによって規則正しく施されたS字型模様が特徴的です。繊細な模様はシャンパンを注ぐことでより幻想的に浮かび上がり、洗練された輝きを放ちます。ローハンシリーズには他にもデカンタやタンブラーなどがあり、バカラの定番のひとつとして、今も愛されています。

クリスタルガラスとは?

バカラ マッセナ ワイングラスそもそも、クリスタルガラスとはどういったものでしょう?
現在一般的に普及しているガラス製品の多くは「ソーダガラス」というもので、二酸化ケイ素、石灰、ソーダ灰からできています。一定以上の透明度があり、硬くて軽いことが特徴です。日常的に目にする窓ガラス、食器、瓶などにはソーダガラスが使われています。
一方、クリスタルガラスは珪砂、カリウム、ソーダ灰などの主成分に、金属化合物(酸化鉛)を添加して作られる「鉛ガラス」の一種です。鉛が含有されることで光の屈折率と透明度が高まり「クリスタル(水晶)のように輝く透明なガラス」ができあがります。
ガラスに反射する光も非常に美しく、ソーダガラスに反射した光の輪郭がぼんやりとしているのに対して、クリスタルガラスに反射した光は輪郭がくっきりしています。カッティングによってはプリズムもはっきり見ることができます。
さらにクリスタルガラスは、指で弾くと金属を打ち鳴らしたように「キーン…」と深く澄んだ音で響くことも特徴です。

クリスタルガラスソーダガラス
添加物金属化合物を含む金属化合物を含まない
キーン…と長く鳴り、深く響くチンと短く鳴り、響かない
色・透明さ無色透明うっすら青、緑、灰色ぽい
輝きくっきりした輝き
プリズムあり
ぼんやりした輝き
プリズムなし

最高級の製品、最上級の職人たち

バカラのクリスタルガラス製品は、「最良の素材、最高の技術、そしてそれを継承する」という理念のもと、優れた職人たちの手によってマニュファクチュール(自社一貫製造)で生み出されています。

クリスタルガラスを作り上げる工程は、肉体的にも精神的にもハードなものです。高温の窯とクリスタルを扱い、ミリ単位の繊細な彫刻や装飾を施す…それらの作業のほとんどが、職人の手作業によって行われます。

バカラ製品を生み出す職人たちは、さまざまな部門のスペシャリストであり、ひとつの作品を作り上げるために協力し合う素晴らしいチームでもあるのです。

バカラでは、職人たちのクリエイティビティを存分に発揮するために、素材、制作工程、技術の絶え間ない改良に取り組んでいるとのことです。

その結果として、バカラの工房はM.O.F(フランス国家最優秀職人)を50名以上輩出しています。これは日本の人間国宝にあたる称号です。フランス国内でも、これほど多くの優秀な職人を生み出したラグジュアリーブランドは、他に類を見ません。

最高級の製品を生み出し続けよう、それを末永く継承していこうという、バカラの不断の努力が垣間見えます。

バカラに魅了された著名人たち

バカラは名だたる著名人や王家に愛好されていることから、「王者たちのクリスタル」とも呼ばれています。

バカラに魅せられた著名人には、女優のマリリン・モンロー、シャネルやフェンディのデザイナーであるカール・ラガーフェルド、スペインの画家サルバドール・ダリなどがいます。

セレブリティだけでなく、現代の王室の方々もバカラを愛好しています。本国フランスはもちろんのこと、ヨーロッパ各国、タイ王室、そして日本皇室でも!

1921年には、当時の皇太子であった昭和天皇がフランス旅行の際、パリのバカラショップを訪れ、のちに「パリの思い出はルーブル美術館とバカラです」と語りました。

その後も、1999年の天皇陛下御在位10年の記念に、2003年の天皇陛下70歳のお祝いにと、バカラ作品がフランスから日本皇室に贈られています。

120年前に始まった日本とバカラの関係

バカラと日本の関係は1901年(明治34年)に始まりました。

大阪の時計商・安田源三郎が、ヨーロッパに買い付けに出かけた際にバカラの花瓶を入手し、日本に持ち帰りました。これを、親戚の茶人で古美術の目利きであった春海藤次郎に、土産として渡します。藤次郎はバカラの美しさに大変な衝撃を受け、バカラ製品の輸入を始めました。さらには日本の和室や茶事にふさわしい大きさやデザインを自ら考案し、バカラに特注するようになります。

こうして生まれた品々はのちに茶人の間で「春海好み」と呼ばれ、現在にいたるまで長く愛されるようになりました。

ピカチュウにまねき猫!?クリスタルで再現される日本のカルチャー

バカラと日本のカルチャーのユニークなコラボレーションは、クリスタルガラスのオーナメント(置き物)として再現され、多くのファンを驚かせています。

ポケットモンスター

1996年にゲームボーイ用ソフトが発売されて以来、コミック、アニメ、アプリゲームと多様なメディアミックスを展開し、いまや不動の人気を誇る「ポケットモンスター」。

ポケットモンスター誕生25周年を祝って登場したポケモンコレクションには、モンスターボールとピカチュウ、2種類のオーナメントがあります。

今にもあの愛らしい声を聞かせてくれそうな躍動感あふれるピカチュウは、クリスタルガラスの輝きを存分に活かしたクリアな仕上がり。手のひらサイズのモンスターボールには、クリアな本体にゴールドで実物同様のラインが描かれています。

ポケモンファンにはたまらないコレクターズアイテムです。

ドラえもん

バカラ ドラえもん日本のコミックス作品の中ではもはや殿堂入りの風格漂う「ドラえもん」も、バカラのオーナメントとして登場しています。クリスタルガラスで再現されたチャーミングな姿は、我々日本人が見慣れたドラちゃんそのもの。国境と時代を超えて愛されるタイムレスな存在としてのバカラとドラえもん、ユニークなコラボレーションといえます。

くまモン

バカラ くまモン九州のご当地キャラクターとしておなじみの「くまモン」も、バカラとコラボしています。
高さ11センチとデスクに飾るのにぴったりなサイズ感。コロンとしたシルエットが実に愛くるしいです。
発売当時、九州の百貨店には、家族や孫へのプレゼントとしての予約が多く入ったとのこと。
オンライン販売はすでに終了していますが、今もコレクターに人気があり、状態の良い中古品を求めるひとが多くいます。

まねき猫

バカラ まねき猫商売繁盛の縁起物として定番のまねき猫オーナメントも、バカラではおなじみとなっています。クリア、ゴールド、レッド、ミッドナイトと、カラーも豊富。金運まねきの右手上げ、人まねきの左手上げ、どちらもラインナップされています。
日本では贈答品として非常に人気があり、商売の場だけでなく開運グッズとして広く受け入れられています。

終わりに

最高級のクリスタルガラス製造ブランドにして、世界屈指のラグジュアリーメゾンである「バカラ(Baccarat)」。知れば知るほどその魅力は輝きを増していきます。

1998年から、日本はバカラにとって世界最大のマーケットとなっており、全世界売上の約3割を占めているとのこと。ビンテージから最新のシリーズまで、日本のバカラ人気は今も根強いといえます。

バカラは買取市場でも人気があり、作品によっては高額で取引されています。

製品の状態、付属品の有無によっては査定額が高くなることも少なくありません。バカラ作品の買取をご検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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担当

小川芳朋

編集部

西洋陶磁器が専門。 美しい物と怖い物について書いています。 アンティーク食器のほか、蚤の市、廃墟、妖怪に詳しい。