良寛の掛け軸のご相談をいただきました。
良寛は江戸時代の曹洞宗の僧侶で、現在の新潟県三島郡出雲崎町に生まれました。俗名は山本栄蔵または文孝。号は大愚。父は地区の名主で、俳人でもありました。18歳で突如出家し、曹洞宗光照寺にて修行します。印加を贈られた後に諸国を漫遊の旅をはじめ、生涯にわたって寺をもたず、無一物の托鉢生活を営みました。出世や栄達を求めることはなかったため、位階もありません。人に法を説くこともせず、老若男女問わず多くの階層の人と親しく交わることを善しとし、己の仏道修行を歩みました。また良寛は「子供の純真な心こそが誠の仏の心」と解釈し、子供を触れ合うことを大切にしていました。懐には常に手毬とおはじきなどの遊び道具を入れていたといわれます。名書家として知られた良寛でしたが、「高名な人物からの書の依頼をよく断っていたが、子供に凧に文字を書いてほしいと頼まれたときは喜んで書いた」というエピソードが残っています。その時、良寛が『天上大風』と書いた凧は現在も保管されています。
書の達人と呼ばれた良寛は、和歌や漢詩、俳句などにも精通し、2千あまりもの作品を遺したと言われています。歌人として広く知られていますが、特定の師はおらず、愛読した『万葉集』からの影響が良寛を育て、その境地に至ったのでしょう。中央歌壇との交渉がなかったため、生前は一般には知られず、明治末期~大正時代にその評価が高まりました。陶芸家・美食家として有名な北大路魯山人は、良寛に強い憧れを抱いており、「良寛様の書、それは品質に見ても、形貌すなわち書風に見ても、容易にあり得ない、素晴らしい良能の美書というべきである。なんの角度から見ても世の常の通りものとは格が異っていて近世における能書例と同一に論じ難い点があると認めねばならない」と讃えています。
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