熊谷守一の掛軸をお譲りいただきました。
熊谷守一は岐阜県恵那郡付知(現・中津川市付知町)に生まれました。裕福な家庭の3男として慶應義塾に進みますが、画家になることを決意し東京美術学校西洋画科選科に入学します。22歳のころ父の急逝とともに実家が破産し、豊島区千早に転居するまでは借家を転々として、友人の援助で何とか生活をしていました。絵が売れるようになってからも、有名になろうとも思わず、権威を嫌い、商売やお金儲けとも生涯縁を持とうとはしませんでした。
そんな熊谷が好んで描いたのは、自然や身近な小動物、道端の花や昆虫など、生命のあるものでした。特に晩年は何気ない身の回りをじっと見つめて、描きたい時だけ描いていたようです。その作品は簡素化された表現で、穏やか印象のものが多く見受けられますが、若い時期からの作品を辿ると、試行錯誤の痕跡がうかがえます。様々な条件下での見え方を探り試作を繰り返し、スケッチをもとに同じ図柄・画題の作品を複数制作するなど、その違いを証明しているかのようです。長年に渡り実直に観察し続けた研究者のような眼と、ものの形や動き、色彩面、線の太さや重なりの順番など、研究の末にたどり着いた確固たる制作手法。それらに裏付けられ、キャンバスに表現された作品は、いずれも熊谷のモチーフへの愛情が伝わってくるかのような、ユーモラスで楽しく、明るい愛情にあふれたものとなりました。
お買取りの品は、形・色彩・構図を探求した熊谷らしさが光る作品で、掛け軸の表装をされた珍しい逸品です。
古美術永澤では書・絵画にかかわらず熊谷守一の作品を高く評価し探しています。
もしお手元に気になるお品がございましたらぜひご相談ください。
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