中村彝なかむら つね

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    中村彝(なかむら つね、1887-1924年)は大正から昭和時代に活躍した日本の洋画家である。

    1887年の7月3日茨城県仙波村(現在の水戸市)に5人兄弟の末っ子として生まれる。しかし、幼い頃に兄弟と両親を亡くし、一家で長男の住む東京に移り住む。陸軍軍人であった長男の直を父代わりとしていたことから、軍人を目指す。
    1901 年軍人を志し名古屋陸軍地方幼年学校に入学。1904 年に卒業。同年、東京中央陸軍幼年学校に移る。しかし、肺結核と診断され、退校を余儀なくされる。
    ショックを隠し切れなかった中村彝であったが、陸軍学校の前に通っていた愛日小学校高等科で知り合った野田半三の影響で絵を描く事に興味を持っていた。そのため、1905年に千葉県へ移り療養している間に絵を描くようになる。翌年から白馬会第二研究所で学び、「洋画講義録」の懸賞絵画展にも応募しており、水彩画が 1 等賞に輝いている。次いで太平洋画会研究所で洋画の勉強し、中村不折、満谷国四朗に師事して画技を磨く。その間にも千葉県などへ転地療養を繰り返していた。
    また、1909年の文展に初入選し、活躍を見せるようになる。1911年には新宿・中村屋の主人である相馬愛蔵夫妻の厚意で、中村屋の裏にある画室に住み、制作活動を行う。病気の彝を献身的に看病した、相馬愛蔵と黒光の長女俊子をはじめとする相馬家の人々を描いた肖像画の数々はこの時期に描かれている。
    しかし、相馬家の長女・俊子をモデルとした作品は、相馬夫妻にとっては嬉しい反面、娘の裸体を描いた作品が展覧会に出品される事により、人々の目にさらされる事への抵抗を感じる。その事により、二人の仲を妨げるようになる。
    1916年には新宿区下落合にアトリエを構える。このアトリエではレンブラントやセザンヌ、ルノワールを研究しながら制作活動を行う。1921年には病状が悪化し、同年7月には遺書を認めている。彝は1921年から翌年にかけては病臥の生活で、ほとんど作品を残していない。1924年12月24日37歳の若さで死去。
    死の直前に描かれた「頭蓋骨を持てる自画像」は頬がこけ、眼の落ち窪んだ相貌になっている。しかし、その表情には苦行僧か聖人のような澄みきった境地が感じ取れる。
    中村彝は草花、静物、人物、風景など多岐にわたるモチーフで知られる画家であり、結核を患っていた事からアトリエで制作した作品が多く見られる。

    年表
    1887年 茨城県で生まれる
    1905年 水彩スケッチを始める
    1906年 白馬会研究所、太平洋画会研究所で洋画を学ぶ
    1908年 太平洋画会展で奨励賞、第三回文展で褒状を受賞する
    1909年 第3回文展で初入選
    1910年 第4回文展で3等賞となる
    1911年 中村屋の裏にある画室に移住
    1916年 新宿区下落合にアトリエを構える
    1920年 ルノワールやロダンの作品を見て強い感銘を受ける
    1921年 病状の悪化
    1924年 死去

    中村彝の代表的な作品

    • 帽子を被る自画像(1910)(ブリヂストン美術館)
    • 少女裸像(1914)(愛知県美術館)
    • 帽子を被る少女(1915)(田辺市立美術館)
    • 裸体(1916)(茨城県近代美術館)
    • エロシェンコ像(1920)(東京国立近代美術館)(重要文化財)
    • カルピスの包み紙のある静物(1923)(茨城県近代美術館)
    • 頭蓋骨を持てる自画像(1923)(大原美術館)

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